アイドル

 

 アイドルが好きだ。彼女たちは、人生においていちばんうつくしい場面を切り取って、それをわたしたちに魅せてくれているのだと、勝手に思っている。胸の奥の、鼓動を感じる。それはきらきらと輝いて、多くのひとの胸の奥に宿る。だから惹かれる。引力がはたらく。いのちを燃やして、ステージに立っている姿にいつも勇気づけられ、励まされている。

 

 感情や感性がふっと無くなってしまうときがある。負の感情すら消えて、ほんとうに何も無くなってしまうのだ。そういうとき、こころを思い出させてくれたのが、アイドルだった。今まで何も感じなかったのが嘘のように、モノクロの世界が色づいた。

 

 

 6月24日、応援している「Maison book girl(通称ブクガ)」というアイドルが、『Fiction』というベストアルバムをリリースした。初回特典には詩集と、年始に行われたライブの映像がついていた。

 

 ブクガの世界が少しずつ変わりはじめている。そう思った。初期からの世界観はまったくブレていないのだが、真っ暗な海底をただよっていたイメージに、すぅっと光が差し込んだような、血の通っているあたたかさがあるような……。透明な万華鏡(イメージ)に近いのではないかとわたしは思った。ずっと聴いていても苦痛でない。心地よい音、歌声。いろんな角度からうつくしい景色がにじんで、移り変わってゆく。最初は、ああ、うつくしいな、と、みているだけでいい。でもその背景には考え抜かれた物語があり、それが明かされたときにハッとする、何度でも楽しめるアルバム。

 

 たくさんの人に聴いてほしい。ライブ映像を観てほしい。詩集を読んでほしい。好きになってほしい。『Maison book girl』。本の家の少女たちが織りなすうつくしい世界の、目撃者になれる。この世界線を生きていて良かったと、心から思う。

 

 

『夢』MV  https://youtu.be/DwcKed26KQ8