恋人

 

 恋人がいる。とても、好きな人がいる。恋人というより、パートナーとか、人生の証人とか、そういう言葉が似合うのかもしれないけれど。

 

 「付き合う?」「……え?」

こんな会話で始まった関係だった。

 

 すごく悲しそうな涙声がiPhoneのスピーカーから聞こえて、どうしてこのひとが泣かなきゃいけないんだ、そんな世界を、わたしはゆるせない。そう思った。絶対に相手の元恋人よりしあわせにできる自信があった。このひとがしあわせで、笑顔でいられる世界線をわたしが作る、という決意に満ちていた。わたしは自分に自信がない人間だ。でも、これに関してはわたし以外にできるのか?いやできない、わたしにしかできないことだ、と、思った。相手もわたしも、元恋人のことを強くこころに思っていたから、相手は不安がったが、最終的にお付き合いをする運びとなった。

 

 共有するものが増えた。それは単純に時間だったり、感情だったり、過去だったり。お互いにいつも聴いている音楽を寄せ集め、プレイリストを作って交換したりもした。たのしい。毎日がたのしくて、きらきらかがやいて、ああ、なんとなくしあわせだなぁ、と思う。ぼんやりしているとき、じんわり多幸感が湧いてくる。しあわせで、涙がこぼれそうになるときもある。

 

 これから、何があるかは分からない。お互いに病気を抱えているし、遠距離恋愛であるし。でも、ぜんぶ抱きしめて乗り越えていけたらと思う。お互いが心地よい関係を構築したい。相手をしあわせにしたい。だって、好きだから。恋人が笑ってくれる世界線で息をしたい。ふたりで世界を創っていけたら、きっと今よりしあわせになれる。今がいちばんしあわせだから、想像できないけれど。大丈夫だ、ふたりなら。

 

 どうか、となりでわらっていて。わたしは、あなたが好きだ。